職場のダンディおじさまの話。

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こんにちわ、蘇芳です。
契約期間が終わって晴れて無職になってまだ4日目ですが、なんだか落ち着かなくなってきました。
これが貧乏性ってやつですかね。

女性より女性らしい気づかいの人

今日は本当に気楽な話をしようと思います。
先日まで勤めていた職場の、優しいおじさまのお話です。

このおじさま、以前は本社の秘書課に在籍してらっしゃいました。
「本社」も「秘書課」も聞いただけで気疲れしそうですが、そこで退職まできっちり勤め上げたあと、職員のサポート役としてウチの職場に来てくださったわけです。

首都圏暮らしが長かったその方ですが、実はもともと地元の出身だそうで、帰ってこられたことを喜んでいらっしゃいました。

ウチの辺りは本当に田舎なので、絵に描いたようにガサツな田舎のじーちゃんばーちゃんが多いのですが、その方は「さすが本社の秘書課!」と言いたくなる物腰の柔らかさと、細やかな気遣いのカタマリみたいな人。

なんなら田舎のばーちゃん候補の私なんかより何倍も女性らしくて、誰かの話を聞きながら頬に手を添えて優しく相槌を打つその姿は「あれ?おばさまだったかいな?」と二度見してしまう程です。
電話応対の際には電話の向こうの相手の方に微笑みながら、
「かしこまりました」
「承知いたしました」
「そのように申し伝えます」
と、ドラマか映画の中でしか耳にしたことがないような麗しい言葉のオンパレード。

すおう
すおう

すげーな秘書課!!
承知いたしました、って初めて生で聞いたわ!!

おじさまの向かいのデスクに座って、内心で感動のツッコミをしまくる日々でした。

クセが強い!

そんな物腰の柔らかなおじさまの別の顔が見えてきた出来事がありました。

その日は、本社のお偉いさんだったOBの方が見えるということで、所長始め管理職の方々が朝から落ち着かない様子でした。
私なんぞ今まではもちろん、今後の人生でもきっとその日にお茶を出す以上に関わることの無い相手なのでポヤポヤと普段通りに仕事をしてました。

しかし、ここにもう一人、管理職なみに全力でソワソワしている人間がいたのです。

そう。例のおじさまです。

「お茶出しって課長から頼まれてますか?」
「何時くらいに出すように言われてますか?」
「おしぼりは付けますか?付けない?そうですかなるほど」


総理大臣でもくるの?くらいに張り切っているおじさま。
いや、私たちが出しますんでね、心配しなくても大丈夫ですよ~。
時間もちゃんと聞いてますんで~。
なだめてなだめて、ようやく落ち着いたかに見えたおじさま。

しかし、OBの方の到着予定時間の1時間ほど前になるとまたソワソワしはじめ、突然「あ、そうだ!」と漫画のようにポンと手を打って立ち上がると、私のデスクにすすすーっと近寄ってきてしゃがみ込むと、なぜか小声でヒソヒソと
「お茶を出すのにお茶請けがあったらいいよね!(上州名物の某饅頭)とかどうかな!」

…え?いや、そんなおもてなし要らないのでは…と思ったものの、自分のアイデアがこの地上で最善!みたいな勢いでキラキラの表情で話をしてくるおじさまに「いや~要らないっしょ!」と言えるほどの勇気が私には無く。

「あ・・・そ、そう、ですね!きっと喜ばれますよね!」

目が泳ぎまくりの私なんぞには目もくれず、賛同を得られた嬉しさのまま
「よし!まだ間に合うね!!私ちょっと行って買ってくるから!!」
とそそくさと自分のカバンを持って外に飛び出ていくおじさま…

全力のおもてなしタイム

そうして買ってきたホカホカの名物饅頭ですが。

あれ?
ちょ、やたら多くないですか?!


受け取った饅頭の山に混乱していると、おじさまが例の『自分の考えは世界一!』の表情で
「せっかくだから職員さんの分も買ってきたんだよ!お茶の時間にみんなに配ってあげてくれる?」(キラキラ~☆)

いやアンタ!余計な仕事増やすなやー!!

…もうここまでくると、他の事務の女性陣もおじさまのクセの強さにも気づき始めました。

ねえねえ、なぜにコレ?
優しさじゃない?
いやでもさすがに多いのでは…
配るのなんだかんだでウチらだし…ねえ?
まあ嫌いじゃないからいいけどさ~

それこそヒソヒソ話。
まあ、美味しくいただきましたけど。


…おじさまのこの饅頭爆弾。
この後も折に触れ、何度か投下されたことを付け加えておきます。

全身全霊を込めたカレンダー作り

おじさまが来る前年の夏あたりに本社から、各地の管理所に「それぞれの特色を生かしてカレンダーを作れ」的な指示が出されました。
出来の良かった上位いくつかを関係各所に配るとのことで、とりあえずウチの課がメインで作成にあたることになり、その年は大型のプリンターで印刷だけしたものを本社に提出しました。

それが、おじさま降臨によって大掛かりなイベントに変貌を遂げました。

なんと、ご自身の経験と知識を駆使して、業者並みの高クオリティのカレンダーを作り上げたのです。

材料はなるべく古い紙ファイルなどの廃材料を使用して低コストで抑え(なんてったって、配るだけですから。売り物じゃないのよ)お金はかけずに(それでも大型プリンターでA1とかA2のミラーコート紙にフルカラー印刷してるあたりで、元同人屋の私からしたら充分贅沢だけどね!)

ひたすら手間をかける。

そうなんです。
おじさま、自分がさほど忙しくないものですから(平たく言うとヒマなので)

ひたすら手間をかけまくる。

気づけば、ほぼ毎日「カレンダー業者か?!」と疑いたくなるほど
あんたカレンダーしか作ってねえ!!

しかも、私たち事務の女性陣にもその手伝いを笑顔で強要してくるおじさま。

いやいやいや、こう見えて私たち意外に忙しいんですけど?
カレンダーだけ作りに来てるわけじゃないんですけど?

しかし、断れるはずもなく、カレンダー作りに巻き込まれていく女性たち…

製本機を死守せよ!!

おかげ様でこの年は、それはそれは立派なカレンダーができあがり、本社から「業者に頼んだのか?!」と疑われるほどでした。
手作りと分かると絶賛の嵐で、カレンダー制作の中心にいたおじさまはそれはそれは嬉しそうで、手伝った私たちにもお礼を言って回っていました。

そして次の年。

再びカレンダーの時期となり、周りの「もう、あんなに凝らなくていいんじゃないの?」という空気をよそに、おじさまのエンジンが再始動。
「今年はカレンダーの芯に、ちゃんと厚紙を買ってもいいかな♪」

おじさまの言う「芯」とは、カレンダーの一番上の穴が開いている、壁にクギなどでひっかける部分のことです。
そしてここに、製本機で穴を開けるのが私の担当でした。

しかしコレが問題で。
前回のカレンダー作りで穴を開けて以降、製本機の調子がどうもおかしい。
私の仕事として毎月、300枚以上の書類をまとめて製本する作業があるのですがその際、本来ならば穴を開けるたびに排出されるはずのゴミが製本機の内部で詰まってしまい、きちんと排出されなくなってしまったのです。

まるで職人のようにあちこち調べまくり、最後は若い職員の男の子と一緒に、取説とにらめっこでドライバーで可能な部分を外してみた結果、原因はやはり例のカレンダー作りだと判明。
カレンダーを重ねて芯を付ける際に、すべてのカレンダーがずれないように両面テープで貼り付けた部分に製本機で穴を開けたために、テープが中で粘ってあちこちに詰まっていたのです。

職員の男の子と二人でメンテナンスしながら、

すおう
すおう

こりゃ両面テープはやめてもらわないと…
また穴開けたら詰まっちゃうよね~

職員くん
職員くん

そっすねー。
これで壊れちゃっても困りますしね

万が一、本当に壊れてしまって買い替えになった場合はいくらするのかな~。
5万円くらいかな~?
いや、もっとするか?15万とか?
そう思いながら調べてみると。

50万円!!!でしたー!!!うっひょーー!!

気軽に買い換えられる金額じゃなかった!!
壊しちゃダメ!絶対!!

そこでおじさまに状況を説明し、穴を開ける中央部分だけノリ付けをやめてもらうようにお願いしに行くと、とりあえずOK。しかし…

「でも2つくらい、もう作っちゃったのがあるんだよね」
マジすか~。
そしたら、それは何か別のやり方で穴を開けるんで…
「2つくらいだから、やってもらえない?」ニコニコ

すおう
すおう

え、いや、でも数の問題じゃないんです。
1つだとしても何枚も両面テープが重なってるわけだし

「でも2つくらいなら大丈夫じゃない?」ニコニコ

…だめだ、話が通じねえ!
サイコパスか貴様!!
てかこの人、何としてでもねじ切ってやらせる気だ!

なんということでしょう。
そうです。
おじさまは自分の仕事がこの職場で一番重要な任務であるという感覚に陥っているのです。

いやだからそれは所詮無料配布のカレンダーでしょうが!!

こちとらそれで50万円の機械ぶっ壊すわけにいかねーんだよ!!(心で絶叫)

…その後も何度か「できる」「できない」の押し問答をくり返しましたが、やっとのこと渋々あきらめてもらい、どうにか製本機を守ることに成功しました。

すおう
すおう

マジで疲れたぜ・・・

最後のプレゼント

そんなおじさまですが、決して悪い人ではありません。
基本は細かな心配りができる優しい方です。

若い職員に質問されると同じ事を3周くらい延々説明して、結果30分も捕まえて、若い職員に内心白目向かせちゃうような人ですが。
本社でも話が長いことで超有名人だというのが分かったりしましたが。
とりあえず、丁寧が過ぎるんです。


この職場でのワタクシ最後の勤務日のこと。
新しい方に必死で引継ぎをしている中、おじさまから社内メールが。

『上の階の冷蔵庫にビニール袋を入れてあります。
 気持ちです、お持ち帰りください。
 いろいろ大変お世話になりました』

あらやだ優しい~。
とは頭の片隅で思ったものの、引継ぎに全集中していたためすぐにメールを閉じて新しい方への説明へ戻り引継ぎ再開。
その後、残業が1時間を過ぎた瞬間に課長が気を遣って「そろそろ、ね」と声をかけてきて、顔を上げると課の皆さんがずらり勢ぞろいで立ち上がっていて「お疲れさまでした!」と申し訳ないくらいに素敵な花束なんか渡していただいて、恐縮しつつ荷物をまとめて事務室を出て。


危うくおじさまからの「ブツ」を忘れて帰るところでした。


上の階の冷蔵庫を開けると、メールのとおりビニール袋が入っていて、中には「蘇芳さんへ」と書かれた職場の封筒に入った何かが。
最初は例の名物饅頭かと思って、冷えたアレは美味しくないぞ、イヤだな(汗)とかもらう立場で失礼なことを思いながら手に持つとズシッとそれなりの重さ。

ん?これは例の饅頭じゃない
じゃあ何だ??
そういえばこの封筒、午前中に「封筒1枚もらうね~♪」って取りにきてたアレか!


階下では課のみんながわざわざ見送りに待ってくれているため、ゆっくり見ることも気が引ける。
ご丁寧に封筒に入っているため、縦にしていいのか横じゃないとダメな物なのかすら分からない。

あーもーごめんなさーい!!

慌ててバッグに縦入れで放り込み、せめて汁が出ないものでありますようにと祈りつつ階段を駆け下り、守衛さんまで並んで恥ずかしくなるほど盛大にお見送りしていただいて、しかも雨がガンガン降る中を傘をさしてもらって車まで送ってもらって…
ひたすら恐縮しながら帰途につきました。

ハッピー☆ハロウィーン

自宅に着くと「え?!今日最終日だったのか!それはお疲れ様」と花束を抱えた私に父ビックリ。
いやいや、言ったじゃん!
まあ自分の予定以外は大して覚えてないのは私も同じだから人のことは言えない。
親子だぜ…(・д・)チッ

そこで例のおじさまからのプレゼントを封筒から出すと、汁は出てなくて一安心。
それは地元の老舗和菓子屋さんの箱でした。
どうやら生菓子らしい。
箱にはおじさまからのメッセージが書かれた付箋が貼ってありました。

大変お世話になりました。明日から淋しくなります
 気の利いたものが贈れなくてすみません。
 少しですがお召し上がりください。

何を仰いますか!
充分気が利いているじゃないですか!
利きすぎて若干重いくらいですわ!

箱の中身はめっちゃくちゃ可愛い和菓子でした。

気遣いの人らしく、秋のお菓子がズラリ。
なぜか桜のお菓子も入ってたけど、それはきっと通年販売のものに違いない。
ということにしておこう、知らんけど。


熱いほうじ茶を淹れて、おじさまの思いの籠ったねっとりと濃くずっしりと重い練り切りを食べながら、あの方が独り身の理由をしみじみと感じる秋の夜長でした。

課のみんなからいただいた花束。嬉し~♪

最後まで本当にどうでもいい話ですみません。
ここまでお付き合いくださいったあなたは、きっともの凄く良い人です。
明日はきっと良いことがあるに違いありません。
ってそんなパワー、私にはないけど笑

ともかく、本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございましたー!

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